会社をたたもうかと考え始めたとき、最初に気になるのは「いくら出ていくのか」ではないでしょうか。滋賀県でも休廃業・解散は高い水準が続いており、帝国データバンクの調査では2024年に528件と、2016年以降で最も多くなりました(滋賀県内企業「休廃業・解散」動向調査(2024年))。廃業にかかるお金は、費目ごとに分けて見積もると「いつ・いくら必要か」が具体的に見えてきます。
法的手続きの実費(登記・官報)
会社をたたむには、解散と清算結了の登記、官報公告などの法的手続きが必要です。これらは金額が読みやすい、固定的な費用です。解散・清算結了・清算人選任といった登記にかかる登録免許税はあわせて4万円程度、官報公告料は3〜4万円弱が目安です。
金額自体は大きくありませんが、手続きには順番と時期が決まっています。解散の登記をしてから官報公告を行い、債権者保護のための期間を経て清算結了に進む、という流れです。見落とすと清算そのものが前に進まないため、最初に全体像を押さえておくことが大切です。
専門家への報酬
解散の登記は司法書士、清算の税務申告は税理士に依頼するのが一般的です。廃業では通常の決算とは別に、解散事業年度・清算事業年度・残余財産確定と、複数回の申告が発生します。
そのため専門家への報酬は、通常の顧問料とは別枠で考えておく必要があります。会社の規模や申告回数によって変わりますが、数十万円程度を見込んでおくと、後から慌てずに済みます。何回の申告が必要になるかは会社の状況によって変わるため、早めに確認しておくとよいでしょう。廃業を決める前に確認しておきたい数字や手続きの全体像は 廃業を決める前に確認したいこと でも整理しています。
設備・在庫・車両の処分費用
事業で使っていた設備、在庫、車両などは、廃業のときに処分する必要があります。買い取ってもらえるものは費用を抑えられますが、買取の対象にならないものは処分費が持ち出しになります。
一般的にはトラック1台分の処分で数万円からが目安です。ただし、製造設備や大量の在庫がある場合は数十万円から数百万円、規模によっては1,000万円を超えることもあります。処分費は会社の業種と規模で大きく振れる費目なので、早い段階で「何を・どれだけ・どう処分するか」を把握しておくことが重要です。
実際の相談現場でも、設備や在庫の処分費が当初の見積もりより大きく膨らんでしまったケースは少なくありません。
賃借物件の原状回復費用
店舗や事務所、工場を借りている場合、退去時に原状回復が必要になります。費用は坪あたり数万円から10万円程度が目安ですが、空調や配管、間仕切りを変更している場合は、その分が上乗せされます。
原状回復の範囲は、賃貸借契約書の特約で決まっていることが多くあります。「スケルトン返し(内装をすべて撤去した状態で返す)」が条件になっていると、想定より費用がかさむこともあります。契約書を早めに確認し、貸主とどこまでが原状回復の対象になるかをすり合わせておくと、見積もりの精度が上がります。
リース・借入の残債と中途解約金
リース契約は「途中でやめれば終わり」ではありません。多くのリース契約では、中途解約のときに残りのリース料相当額を一括で支払う条件になっています。設備をリースで導入している場合、廃業時にこの精算が必要になることを見落としがちです。
借入も同様で、廃業を決めても債務が自動的に消えるわけではありません。残債がいくらあり、誰が保証しているのかを確認しておくことが、廃業の判断材料になります。借入や個人保証の整理は廃業の可否そのものに関わるため、実費の見積もりと並行して確認しておくことをおすすめします。
リースの中途解約による残リース料の精算を把握されていない経営者の方も多くおられます。
実費を見積もると「いつ・いくら必要か」が見える
ここまでの費目を足し合わせると、廃業に必要なおおよその金額が見えてきます。中小企業庁の中小企業白書によれば、廃業した企業の36.2%が100万円以上の費用がかかったと回答しています。設備処分や原状回復が大きい業種では、さらに膨らむこともあります。
大切なのは、これらの実費を手元の資金と突き合わせて確認することです。「たためるはずなのに、たたむお金が足りない」という事態を避けるために、早い段階で費目ごとに見積もっておくと、廃業・承継・第三者承継のどれを選ぶかを落ち着いて比較できます。選択肢全体の比較は 廃業・事業承継・スモールM&Aの選択肢比較 でも整理しています。
初回相談でも「廃業したいが、たたむお金が手元にあるか不安」「何にいくらかかるか分からず動けない」という声を多くいただきます。